「犬が膵炎のときの食事ってどうすればいいんだろう…」
「飼っている犬が膵炎になり食事について悩んでいる」
「飽きのこない膵炎用の食事ってどんなもの?」
愛犬がご飯を食べなかったり、元気がないととても心配になりますよね。
膵炎は一度なってしまうと完治が難しく、慢性化してしまう可能性がある病気です。
重症化・慢性化してしまう前に食事習慣の改善や適度な運動など継続的な健康管理をしましょう。
今回はそんな犬の膵炎と食事について、獣医師であり著者の宿南章(しゅくなみあきら)先生をお招きして、詳しく聞いてみることにしました!
目次
1.犬の膵炎とは
1-1.犬の膵炎について
膵炎になる原因についてははっきりと解明されていませんが、消化器官である膵臓に炎症が起きている状態です。
- 最近愛犬の食欲が落ちているような気がする
- 下痢の症状が続いている
- おなかが痛そうにしている
などの症状があったら要注意です。
犬の膵炎は珍しい病気ではなく、どの子にでも起こりうる病気です。
気付かないまま重症化すると他の病気を併発したり命にかかわることもあり得ます。
ただ、早期に気付いてあげられることで軽症で済むことも多いのです。
まずは、膵臓の役割と膵炎とはどんな病気なのかについて解説します。
1-1-1.膵臓の役割
膵臓は、消化器官の一種で「膵液」と呼ばれる消化液を作り出す重要な臓器です。
膵液にはタンパク質や脂肪分、炭水化物を分解して吸収できるようにしてくれる働きがあります。
また、胃酸のような強力な消化液を中和して、十二指腸を守ってくれるという能力もあります。
膵臓の働きが悪くなると、消化不良や食欲不振といった症状が現れます。
膵臓が作る膵液は様々な酵素を含み、腸で働きが活性化され食べ物を消化します。
そのため、働きが正常であれば膵臓自体は酵素分解されることがない仕組みになっています。
もう一つの役割は、ホルモンの分泌です。
膵臓ではインスリンなどのホルモンが分泌されています。
インスリンは血糖値を調整する重要な役割を果たしており、長期間、膵臓の機能に異常があるとインスリンが分泌できず糖尿病を併発する場合もあります。
1-1-2.犬の膵炎とはどんな病気か?
膵臓は食べ物を消化するために消化酵素を作っていますが、この消化酵素は膵臓にある時はまだ活性化されていません。
十二指腸で腸液と混ざることで消化効力を発揮します。
しかし、膵炎は自分で出した消化酵素で自分自身を分解し傷つけて炎症を起こしている状態です。
画像出典:https://pet-monosiri.com/2021/04/03/dog-pancreatitis-diet/
重症化すると全身性の炎症を起こしたり、最悪の場合命に関わるケースもあります。
膵炎がきっかけで引き起こる病気には糖尿病や、多臓器不全、膵機能障害などがあります。
原因は食事と深い関わりがあります。
治療法や特効薬はなく、膵炎と分かると自宅で食事による体質の改善を行うことになります。
膵炎には「急性」と「慢性」があり、犬の膵炎の最初の発症の多くが急性膵炎です。
始めは下痢や嘔吐、腹痛などの症状が現れます。
慢性膵炎になると、膵臓がダメージから委縮し膵臓機能の低下から消化吸収ができず食事もままならなくなります。
まずは体調の異変にいち早く気付き対応することが大切です。
1-2.犬の膵炎の種類
膵炎には「急性膵炎」と「慢性膵炎」があります。
膵炎と診断されるほとんどが「急性膵炎」ですが、一度なってしまうと繰り返し発症し「慢性膵炎」に発展する可能性があります。
犬の膵炎はいち早く異変に気付き、適切な治療を行えるかが重要です。
症状に気付かず、長期間にわたって膵臓が自分の膵液によって分解され続けてしまうと回復が見込めなくなってしまいます。
また、膵炎と分かった時にはすでに慢性的になっていて他の病気も発症していたりする場合もあります。
軽症であれば獣医師との相談で自宅での食事による生活習慣の改善などで済む場合もあります。
早期発見のため「急性膵炎」と「慢性膵炎」の症状や原因について詳しく知っておく必要があります。
正しい知識があれば、もしこれから膵炎になってしまった場合でもきちんと対応することができます。
膵炎は繰り返すことがある病気なので、一度発症したら体調管理には細心の注意が必要です。
1-2-1.急性膵炎について
急性膵炎はある日突然起こり、前日まで元気にご飯を食べていたはずなのにと慌ててしまう飼い主が多い病気です。
急性膵炎は活性化した膵液が膵臓自身を分解して炎症が起きてしまう病気です。
膵炎になる根拠やはっきりとした原因は今のところ解明されていません。
急性膵炎の症状は、ある日突然嘔吐や下痢、発熱、食欲不振といった症状が現れます。
下痢や嘔吐が続くことで、脱水症状になったり体重減少が見られます。
黄色い液状の便や血便が出ることもあります。
前足を伸ばし、お尻だけを持ち上げるポーズをしていたら激しい腹痛がある時です。
これらのような様子が確認できたら、急性膵炎にかかっている可能性が非常に高いといえます。
急性膵炎の場合、初期症状が胃腸炎と似ているため誤った診断をされ正しい治療がされず重篤化してしまうケースもあるので注意が必要です。
処置が遅れると死に至ることもある危険な病気ですので覚えておきましょう。
直接的な原因は今のところはっきり解明されていませんが、リスク要因としては次のような項目が挙げられます。
- 肥満
- 高脂質な食事
- 脂質代謝異常
- ホルモンの疾患
- 手術後
- 投薬
普段持病がなく健康的な犬だと、膵炎になる直前にいつもと違う特別な食事やおやつをあげたなど、よく耳にします。
急性膵炎は膵臓で作られた消化液が何らかの原因で腸ではなく膵臓内で活性化され、膵臓組織が自己消化されてしまうことで炎症し腹痛や下痢、嘔吐などの症状を引き起こします。
1-2-2.慢性膵炎について
慢性膵炎は、急性膵炎の再発を繰り返したり、軽症であった症状を見逃してしまい治療せずにいて慢性的な膵炎に発展してしまった状態のことを言います。
慢性膵炎は炎症のダメージが長期間続くことで、膵臓に負担がかかりインスリンの分泌がされなくなると糖尿病を併発してしまうこともあります。
作られた膵液が膵臓から漏れ出してしまうこともあり、周囲の臓器にも影響が出る場合もあります。
慢性膵炎は長期的にダメージを受けた膵臓が完治することはなく、上手に膵炎と付き合っていくしかない病気です。
長期にわたる下痢や嘔吐、腹痛、消化不良、食欲不振、体重の減少が続きます。
急性膵炎と基本的に症状は変わりませんが、急性膵炎に比べ症状は軽いことが多く長期に渡る体調不良が続くので合併症や誘発される病気などの心配も出てきます。
また、消化液の分泌が上手くいかないと食べ物を消化しきれず脂肪便が出るようになるのが慢性膵炎の特徴です。
急性膵炎がきっかけで膵炎を発症し、改善と悪化が繰り返されることで慢性的になると考えられますが、はっきりとした原因は分かっていません。
慢性膵炎はゆっくりと病状が進行するため、気付いたら重篤な状態になっていたというケースも少なくありません。
ウイルス感染が原因の時もありますが多くの獣医師が食べ物との関連性を指摘します。
消化器官に負担の大きい高脂質な食べ物などを与え続けたことがきっかけで発症することが多いといいます。
急性膵炎も慢性膵炎も遺伝的になりやすい犬種がいます。
- ミニチュアシュナウザー
- ヨークシャテリア
- トイプードル
- コッカースパニエル
などの特定の犬種です。
ミニチュアシュナウザーは遺伝的に急性膵炎を起こしやすいと言われており、もともと脂質代謝異常を持っていることが多い犬種です。
また、年齢や性別も関係性があると考えられており比較的に中年齢から高年齢の犬、オスよりもメスの方がかかりやすい傾向があります。
膵炎は獣医師から見ても診断が難しい病気です。
誤った対処をしていると命に係わる病気でもあるため見た目の症状だけで自己判断するのはとても危険です。
気になる症状があったら直ちに病院で検査を受け、正しい診断をしてもらうことが必要です。
1-3.膵炎の治療法について
膵炎は症状が軽いと気付かれないことも多く、誤診されることもしばしばある病気です。
気になる症状は詳しく伝えることが大切です。
急性膵炎の場合、症状に合わせた点滴や投薬が基本となっています。
- 点滴による水分補給
- 鎮痛剤で腹痛を抑える
- 制吐剤で嘔吐を抑える
ほかにも、抗菌剤や胃腸運動促進剤などがあり病状の進行や症状によって使用が判断されます。
膵臓が正常な機能を果たしていないので、いづれも注射や点滴での投与となっています。
ゆっくりと病状が進行する慢性膵炎よりも緊急性が高い病気なので、迅速な判断と対応が求められます。
膵炎に対して現在、特効薬はありませんが近年「ブレンダZ」という炎症を抑える薬が動物病院で良く使用されます。
これは動物用医療品で、サイトカインという炎症を起こす物質を抑えることで炎症反応を落ち着かせるというものです。
急性膵炎の時によく使用されており、膵炎以外の病気でも使用シーンが多く今後期待されている薬の一つです。
ただ、根本的な治療ではなく、症状を和らげるというものです。
ブレンダZは新薬のため価格が高く、積極的に使用することは治療費も高額になることを覚えておきましょう。
膵炎の治療にかかる費用としては、軽症で日帰りが可能な程度だったら2~3万円、入院して治療が必要になった場合5~10万円ほどかかると予想されます。
膵炎は症状に差があるため、治療の内容や通院の期間、金額にも個人差が出ます。
お家で日常的にケアできる方法で、できる限り愛犬にも経済的にも負担がかからないようにしたいですね。
膵炎と食事の関係性は非常に深く、食事内容の改善で症状が良くなった例が多くあります。
急性膵炎も慢性膵炎も、膵臓に負担のかからない食事に変え様子を見ながら再発防止に努めるとともに、肥満などを指摘されればダイエットをして生活習慣の見直していきます。
2.犬の膵炎に効果的な食事について
急性膵炎の場合、いったん症状が落ち着くと完治したと思ってしまいますが傷ついた膵臓が元通り治ることはありません。
またいつ再発してもおかしくありません。
治癒後も体調管理を意識して、改善と維持を継続することが重要です。
慢性膵炎の場合も、症状が重症化しないように食事などの生活習慣を改善することが必要になります。
普段の食事を獣医師が開発した膵炎のケアに効果的な「療法食のドッグフード」に変えることが最も効果的です。
2-1.愛犬が膵炎になってしまったら
膵炎になると、食事について悩む飼い主がたくさんいます。
「栄養バランスも考えて膵炎にも良い食事なんて思いつかない…」
「手作りがいいのは分かるけど続けていく自信がない!」
こんなことを考えてしまう飼い主さんも少なくないです。
病院で診察を受けて、膵炎と診断され緊急性が高いと判断されると入院期間中は膵臓を一度休ませるために絶食から始まります。
膵炎を治す薬はないので下痢や嘔吐によって脱水を起こしていれば点滴による水分補給をしたり鎮痛剤や吐き気止め、膵臓の炎症を抑える薬を症状に合わせて適宜行っていきます。
症状が落ち着いてきたら低脂肪・低たんぱくな食事を中心に健康的な規則正しい生活を心がけます。
おやつなども与えてはいけません。
愛犬が膵炎になってしまったら食事管理を中心としたケアを行うことになります。
食事を低脂肪なものに変えて様子をみるよう指示があることが一般的です。
ただ、低脂肪を意識しすぎて栄養バランスが偏ってしまうこともあり得ますので注意が必要です。
膵臓は消化器官の一つなので、基本的に「栄養バランスを考えた消化が良く体に優しい」食事にすることを気を付けるようにします。
肥満やコレステロール値が高い状態も膵炎を悪化させてしまうため改善していかなくてはなりません。
膵炎は一度なってしまうと治ったと思ってもまた再発する可能性が高い病気です。
それを繰り返すと慢性になってしまうので、食事で管理して上手に付き合っていくことが必要です。
2-2.膵炎になった時に注意したい食事とは?
膵臓は消化器官の一つです。
膵炎の原因ははっきりと分かっているわけではありません。
しかし食べ物の消化に関わる臓器なので膵炎になる原因はやはり食べ物の影響を受けていると考えられます。
そのため食事による体質と習慣の改善が最も重要です。
食事に制限をつけ続けることは、愛犬自身ももちろんですが管理する飼い主にとっても負担が大きく悩む人が多くみられます。
具体的に食事を与えるときに注意したいポイントを見ていきます。
膵炎になってしまった愛犬に対して、食事を選ぶ時の注意すべきポイントについてです。
膵炎のリスクを高めると言われる、高脂質で添加物の多い市販のおやつ類を日常的に与えることが膵炎を発症する原因であると多くの獣医師から指摘されています。
食べ物を消化するときは膵臓に負担がかかっている、ということを念頭に置いて考えます。
まずは、なるべく膵臓に負担かからない食事を選ぶようにすることが大切です。
特に「高脂質」「高たんぱく」は消化する際、膵臓に大きな負担をかけてしまいます。
食べ物を消化するのに膵臓への負担を最小限に抑えるため消化の良いものを選ぶようにします。
普通に炊いたご飯などは消化に悪いのでおかゆにするなどの注意が必要です。
その他、避けた方がいいものを具体的に挙げると
- 油でコーティングされた普通のドッグフード
- 匂いや香りの強いドッグフード
- 一般のおやつ
- 植物油
などです。
もし手づくりのごはんを考える際、油は使用を控えるように気を付けなければいけません。
脂肪を分解する能力が著しく低下しているので、低脂肪の食材を選びましょう。
手作りをする際は、脂身の多い肉を使わない、炒めるときに油を使わないという点に配慮します。
市販のおやつや甘いもの(糖分の多いもの)、人間用の食べ物もあげないようにしましょう。
また、多くの人が犬の食事として与えているドッグフードもものによっては膵臓に負担をかけている場合があります。
一般的なドッグフードは脂肪(油)や添加物を多く含んだ商品もあり、ドッグフードを消化するときは常に消化酵素を出さなくてはならず膵臓にストレスがかかっている可能性があります。
ドッグフードの種類を変えて与えようと考えるときは、成分表をしっかりチェックして低脂肪のものを選び良質な原料が使われていることを確認するようにしてください。
食事を与えるタイミングについても注意が必要です。
食事は一度に多く与えすぎず、一日2回以上に分けて与えるようにします。
良い食事を選ぶために特に次の3つの点について注意しておくことが必要です。
- 低脂肪
- 質の良い(消化しやすい)タンパク質
膵炎の食事はまず「低脂肪」を意識することが必須です。
また肥満や高脂血症は膵炎のリスク要因に挙げられています。
適度な運動も取り入れながら肥満にならないよう「低脂肪」な食事を意識することが大切です。
最後に「消化の良いもの」です。
タンパク質は消化しにくいので質には十分注意して選ぶようにします。
膵炎に良いとされる食材の具体的な例としては
- カッテージチーズ
- 鶏のささ身
- むね肉
- 鹿肉
などを量を少なく使用します。
ただし、高温で加熱され続けると脂肪が酸化してしまい消化効率が悪くなります。
鶏のささ身などの低脂肪のものを加熱しすぎず調理されているものが消化に良いです。
タンパク質も摂り過ぎには注意が必要ですが、大切な栄養素の一つです。
そのため、良質なタンパク質を少量摂ることが理想です。
そのほか、じゃがいもなどもおすすめです。
野菜は繊維質なものが多いので、基本的に消化にはあまり良くありませんので無理に与える必要はありません。
栄養バランスが気になるという方や他の病気があって野菜も必要だという方は、柔らかくゆでたものをすりつぶしたり煮汁だけを使って栄養素を摂取するという方法もあります。
ただ、低脂肪を意識するあまり質の悪いものを選んでしまっては意味がありません。
脂肪にもさまざまな種類があります。
酸化した脂肪や質の悪い脂肪は膵臓に負担をかけたり中性脂肪やコレステロール値の上昇に繋がります。
脂肪が極端に不足しても、皮膚や毛に艶がなくなったり皮膚病になる可能性が高まることも懸念されます。
市販のドッグフードは、新鮮な原料を使用した膵炎のために専用で作られたフードがおすすめです。
手作りの食事を考えている場合は、カルシウムが不足しがちなのでヨーグルトなど補填できる食材を与えることが必要です。
また、ミネラルも大切な栄養素となるので塩なども必要に応じて使用することもおすすめします。
手づくりフードにすると何が使われているかが明瞭になりますが、食材ひとつひとつを自分で選ぶ必要があり正しい知識を持ってすべて適量で作らなくてはなりません。
膵炎の他に、肥満であったり他の持病がある場合は担当の獣医師に相談して食事内容を決めていくことが必要です。
2-3.療法食のドッグフード
犬の膵炎には初め絶食など厳しい食事制限がされます。
そのくらい膵臓には負担がかかっている状態なので、少し良くなってきたと思って気を抜くと命取りになり兼ねません。
獣医師との決まりを守り、体調をみながら調整するようにしましょう。
手作りでは脂肪やタンパク質の量がよく分からないので安全面などで不安が残ったりします。
ずっと体に良い食事を継続するのも味気がなく食いつきが悪くなったりして難しい時もあります。
食事管理を永久的に続けなくてはいけないと考えると飼い主にとってもストレスとなってしまします。
そこでドッグフードを「療法食」に変えるという方法は有効的です。
犬の膵炎にも対応しているドッグフードもありますので試してみるものおすすめです。
療法食のドッグフードはその病気に対して精通した獣医師が監修しているものなので、安心して与えることができます。
いつもドッグフードだけだと味気がなく飽きてしまうというワンちゃんも多いですが、味に関しても良く食べてくれるよう工夫がされています。
毎日食べてもらうために、手作りと療法食のドッグフードを組み合わせたりして飽きないようにアレンジすることもできます。
愛犬にとって食事の時間が楽しくなると嬉しいですね。
最後に
ぜひ、今回の記事が、膵炎のワンちゃんをお持ちで、苦しい思いをされている飼い主の皆様のお役に立つことができれば幸いです。
では、またお会いしましょう!
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