「愛犬が肝臓の数値が高いと言われた」
「肝臓の数値が高いと何かの病気なの?」
「肝臓の数値は下げられるの?」
愛犬が肝臓の数値が高いと言われたら、病気かもしれないと心配になりますよね。
病気ではなくても、生活習慣を見直す必要があるかもしれません。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、悪くなってもなかなか症状があらわれません。
そのため肝臓の数値は、肝臓の状態を知るための指標となります。
今回は犬の肝臓の数値が高いときの原因や対策について、獣医師であり著者の宿南章(しゅくなみあきら)先生をお招きして、詳しく聞いてみることにしました!
目次
1.犬の肝臓について
肝臓の働きについて
犬の肝臓にはおもに
- 代謝機能
- 分泌機能
- 解毒機能
- 貯蔵機能
- 免疫機能の調整
の5つの機能があります。
まずは肝臓の代謝機能について。
犬の体の中では、食べ物からの栄養素を肝臓で必要な物質に合成したり、身体にとって毒になるものや不要な物質を体の外に排出できるようにしたりしています。
つぎに肝臓の分泌機能について。
肝臓では胆汁(たんじゅう)と呼ばれる消化液が常に作られていて分泌され、 食事による脂肪の消化と吸収をサポートしています。
さらに肝臓の解毒機能について。
肝臓は食事から摂取したたんぱく質を分解する時に出た、アンモニアなどの毒素を分解して無毒化しています。
ワンちゃんが病気になると薬を使うと思いますが、薬にはもともと毒性があるため、薬を摂取したときにも、肝臓は解毒をしてくれています。
そして肝臓の貯蔵機能について。
肝臓では摂取した糖質をグリコーゲンとして貯蔵しておき、必要な時にエネルギー源としてブドウ糖に変えて血中に送り出す働きがあります。
肝臓は大きな臓器で、予備能力が高く、また再生能力も高いため、炎症が起きても症状が出にくい特徴があります。
肝臓全体のおよそ80%の細胞が壊れない限り、肝機能をほぼ正常に保つことができます。
ですので、肝臓に異常がみられた場合、残された機能は20%ほどになります。
最後に免疫機能の調整について。
肝臓には病原体やウイルスなどを排除する免疫機能があります。
肝臓の機能が衰えると免疫機能も低下し、病気になりやすくなります。
2.犬の肝臓の数値が高いとどうなる?
肝臓の数値が高い場合、肝臓へのダメージが考えられます。
ただし肝臓の数値が高いからと言って、必ずしも肝臓の病気とは限りません。
数値が高くなる原因が、肝臓の病気だけとは限らないためです。
血液検査によるGPT(ALT)、GOT(AST)、ALP、γ(ガンマ)-GTP(GGT)の数値を総合的に判断して原因を探り、肝臓のケアや、病気であれば治療する必要があります。
3.犬の肝臓の数値について
肝臓の数値は一般的に、血液検査によるGPT(ALT)、GOT(AST)、ALP、γ-GTP(GGT)の4つの逸脱酵素(いつだつこうそ)の数値を使い、肝臓の状態を総合的に判断します。
逸脱酵素とは血液中に漏れだした酵素のことで、たとえば肝臓に多く含まれる酵素が漏れだしていれば、肝臓がダメージを受けていることが予測できます。
逸脱酵素の種類と量から、どの臓器に障害があるかを予測することができます。
逸脱酵素の種類 | どの臓器にある酵素か |
GPT(ALT) | 主に肝細胞(肝臓以外の障害では上がりにくい) |
GOT(AST) | 肝細胞、赤血球、心筋、骨格筋など |
ALP | 肝臓、腎臓、骨芽細胞、胎盤、小腸など広く全身に分布 |
γ-GTP(GGT) | 腎臓、膵臓、肝臓、脾臓、小腸、精巣、前立腺などの全身 |
たとえばGPT(ALT)という逸脱酵素が血液の中に大量に漏れ出していれば、肝細胞がダメージを受けていることが予測でき、肝臓に何らかの障害がでている可能性が高くなります。
また、GOT(AST)など肝臓以外に含まれる酵素が漏れだしていれば、肝臓以外のダメージや、そもそも病気ではないことも考えられます。
それぞれの数値について、意味や見かたについて説明していきますね。
3-1.GPT(ALT)について
GPT(ALT)は肝臓に多く含まれる酵素で、肝臓が正常に働いていれば血液に流れ出てくることはほとんどありません。
しかし、肝臓がダメージを受けて肝細胞が壊れると、酵素が血液中に漏れだしてきます。
そのため、肝臓の数値が高くなるのです。
GPT(ALT)は肝細胞に含まれている量が他の酵素に比べて多いため、GPT(ALT)の数値の上がり方で肝臓の細胞がどれくらい壊れているかを予測できます。
3-2.GOT(AST)について
GOT(AST)は肝細胞、もしくは心臓や腎臓、骨格筋、赤血球などの細胞の中にも存在する酵素です。
肝細胞や筋肉、骨にダメージがあった時に血液中にあふれ出てきます。(肝臓以外の臓器に異常がある場合も上昇)
GOT(AST)の数値の上昇だけでは病気を判断せずに、GPT(ALT)の数値と合わせて病気であるかを判断します。
もしもGOT(AST)の値だけが高い場合には、心筋梗塞(しんきんこうそく)や筋ジストロフィーなどの筋肉の病気である可能性があります。
GPT(ALT)やGOT(AST)それぞれの数値から、肝細胞の障害の程度を知ることが出来ます。
3-3.ALPについて
ALPは肝臓にたくさん存在しますが、他にも骨、腎臓、腸、胎盤など、あちこちの組織に含まれる酵素です。
肝臓や腎臓、骨や腸などで作られ、肝臓に運ばれたのち、胆汁に流れ出ます。
しかし、何らかの原因で胆汁の流れが悪くなると、血液中のALPが上昇します。
必ずしも「ALPが高い=重い病気」というわけではなく、肝臓そのものの異常というよりは、胆管や胆のうの異常を表している項目になります。
3-4.γ-GTP(GGT)について
γ-GTP(GGT)は、肝臓の解毒作用に関わる酵素のことです。
たんぱく質を合成したり分解するための酵素のひとつで、 肝臓に多く存在します。
胆管や胆のうなど胆管系に障害があると数値が高まります。
また、γ-GTP(GGT)は腎臓や膵臓(すいぞう)、脾臓(ひぞう)などにも多く含まれますが、これらの障害で血液中にγ-GTP(GGT)が放出されることはほとんどありません。
そのため、血液中のγ-GTP(GGT)が上昇している場合には、肝臓や胆道の異常と考えられます。
4.犬の肝臓の数値が高い原因
ざっくりとですが
- GPT(ALT)、GOT(AST)の数値が高い=肝臓にダメージがある
- ALP、γ-GTP(GGT)の数値が高い=胆管や胆のうにダメージがある
といったイメージです。
4-1.GPT(ALT)およびGOT(AST)の数値が高い原因
GPT(ALT)およびGOT(AST)の数値が高い場合、肝臓がダメージを受けて機能が低下している可能性があります。
逸脱酵素の種類 | どの臓器にある酵素か |
GPT(ALT) | 主に肝細胞(肝臓以外の障害では上がりにくい) |
GOT(AST) | 肝細胞、赤血球、心筋、骨格筋など |
数値が高くなる原因としてあげられるのが主に病気以外の原因と、肝臓以外の病気、肝臓の病気が考えられます。
4-1-1.病気以外の原因について
GPT(ALT)およびGOT(AST)の数値が高くなる原因として
- 食事
- 薬剤
- 真菌感染症
- 打撲
などがあげられます。
まず食事についてですが、傷んでいるフードやジャーキーなどのおやつ、脂質や糖質の多いものは肝臓に負担がかかります。
つぎに薬剤についてですが、薬剤によって肝臓がダメージを受けて、肝臓の数値が高くなります。
おもに
- ステロイド(プレドニゾロンなど)
- 非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)
- 抗真菌薬(イトラコナゾール、ケトコナゾールなど)
- ジアゼパム
- 抗がん剤(シクロフォスファミド、ロムスチンなど)
- フェノバルビタールなど
などがあげられます。
そして、真菌感染症ではカビが原因で肝臓に膿がたまる肝膿瘍を引き起こします。
さいごに打撲についてですが、交通事故、転落事故などで犬が腹部を打ちつけたときに、肝臓がダメージを受けてGPT(ALT)が一時的に高くなることがあります。
4-1-2.肝臓以外の病的な原因について
GPT(ALT)およびGOT(AST)の数値が高くなる原因では、以下の肝臓以外の病気があげられます。
逸脱酵素の種類 | どの臓器にある酵素か |
GPT(ALT) | 主に肝細胞(肝臓以外の障害では上がりにくい) |
GOT(AST) | 肝細胞、赤血球、心筋、骨格筋など |
- 炎症性疾患(えんしょうせいしっかん)
- 内分泌疾患(クッシング症候群)
- 血栓症
まずは炎症性疾患について。
炎症性疾患によって、GPT(ALT)およびGOT(AST)の数値が高くなることがあります。
炎症性疾患とは、体が何かしらのダメージ
- 物理的刺激(火傷や凍傷など)
- 化学的な刺激(化学薬品接触など)
- ウイルスなどの微生物の感染
を受けた時の防御反応のひとつである「炎症」によっておこる病気のことです。
具体的には
- 歯周病
- 慢性関節炎
- 膵炎
- 炎症性腸疾患
- 敗血症
などの病気があげられます。
つぎに内分泌疾患について。
ホルモンを作る内分泌臓器の障害によりホルモン分泌の異常が起こり、GPT(ALT)およびGOT(AST)の数値が高くなります。
クッシング症候群(副腎の疾患)は、肝臓での代謝に関わるホルモンの分泌が過剰となるもので、肝細胞が腫れあがってしまい、肝臓の数値が上昇します。
副腎では生命維持に必要な様々なホルモンが作られていますが、副腎が病気になるとホルモン分泌に異常(増加や減少)が起こり、肝臓も影響を受けてしまいます。
最後に血栓症について。
血栓症とは、血管に血栓(血液の固まり)ができてしまう病気です。
肝臓への血管(門脈)で起こる門脈血栓症は、肝硬変によく認められる合併症です。
肝硬変になになると血流が遅くなり血栓ができやすくなるため、門脈血栓症が起こります。
4-2.GOT(AST)の数値のみ高い原因
4-2-1.筋肉の組織の炎症
骨格筋(体を動かす筋肉)や心筋(心臓の筋肉)の炎症により、GOT(AST)の数値が高くなります。
逸脱酵素の種類 | どの臓器にある酵素か |
GOT(AST) | 肝細胞、赤血球、心筋、骨格筋など |
具体的には
- 外傷(骨折、脱臼など)
- 筋肉の炎症
- 腫瘍
- 血栓塞栓症
- 重度の激しい運動
- 心筋の炎症
などがあげられます。
4-2-2.血液の病気によるもの
赤血球が壊れてしまう病気のためにGOT(AST)が流れ出し、数値が高くなることがあります。
赤血球が壊れてしまう代表的な病気として
- 免疫介在性溶血性貧血
- バベシア症
- タマネギ中毒
- ピルビン酸キナーゼ欠損症
などがあげられます。
4-3.ALPおよびγ-GTP(GGT)の数値が高い原因
ALPおよびγ-GTP(GGT)の数値が高い場合、肝臓機能自体のトラブルを表しているというよりは肝臓周辺(胆管や胆のう)に異常があることを表しています。
逸脱酵素の種類 | どの臓器にある酵素か |
ALP | 肝臓、腎臓、骨芽細胞、胎盤、小腸など広く全身に分布 |
γ-GTP(GGT) | 腎臓、膵臓、肝臓、脾臓、小腸、精巣、前立腺などの全身 |
胆汁の流れに障害が起こって、流れにくくなっている状態を「胆汁うっ滞」といい、胆汁うっ滞が起こるとALPとγ-GTP(GGT)の数値が高くなります。
γ-GTP(GGT)はALPと比べると数値が上昇しにくいですが、肝胆道系疾患との関連性が強く、ALPと同時に評価することで、ALPの上昇の原因を予測することができます。
4-3-1.外的な原因について
GPT(ALT)およびGOT(AST)と同様、ALPおよびγ-GTP(GGT)の数値も食事や薬剤、外傷などによって数値が高くなります。
4-3-2.肝臓以外の病的な原因について
ALPおよびγ-GTP(GGT)が高くなる肝臓以外の病気では
- 炎症性疾患(膵炎、敗血症)
- 内分泌疾患(クッシング症候群、糖尿病)
- 右心系のうっ血性心不全(肺高血圧症、フィラリア症)
- 横隔膜ヘルニア
などがあげられます。
4-4.ALPの数値のみ高い原因
ALPは骨に多い酵素で、骨の成長や骨に異常がある場合にはALPの数値だけ上昇します。
逸脱酵素の種類 | どの臓器にある酵素か |
ALP | 肝臓、腎臓、骨芽細胞、胎盤、小腸など広く全身に分布 |
成長期の若い犬では、骨がよく成長している頃にALPも高くなります。
また骨の異常としては
- 骨疾患(骨折、骨髄炎、骨肉腫)
- 骨に発生した腫瘍
- 他の場所のがんが転移してきた骨転移
が原因としてあげられます。
骨意外の原因は妊娠によるものです。
妊娠中の犬ではALPが胎盤から漏れ出し、妊娠後期では胎盤が発達するためALPの数値が高くなります。
4-5.肝臓の病気について
肝臓に異常があった場合には、ほとんどの場合GOT(AST)とGPT(ALT)両方の数値が上昇します。
GPT(ALT)よりもGOT(AST)の方が高い場合や、GOT(AST)とGPT(ALT)の両方の値が高いという場合は、肝臓の病気の可能性が高くなります。
また、ALPおよびγ-GTP(GGT)の数値が高ければ、胆管や胆のうなどの胆道系の異常が考えられます。
それでは、肝臓の病気について、説明していきます。
4-5-1.脂肪肝
肝臓にとって、脂肪は大敵です。
- 高脂肪食や高タンパク質のドッグフードの与えすぎ
- 運動不足やストレスがかかるような生活環境
など、脂肪を必要以上に摂取したり、食べ過ぎや運動不足のせいで、脂肪が肝臓に蓄積すると、肝臓は正常な働きができなくなってしまいます。
肝臓に脂肪がたまりすぎると脂肪肝という状態になり、末期では肝臓のほとんどが脂肪になってしまうことがあるほどです。
脂肪肝自体では無症状ですが、脂肪肝が原因で血流が悪くなり、全身に必要な栄養や酸素が届かなくなってしまいます。
また、慢性的に肝炎を起こしたり、肝臓ガンになってしまうこともあります。
4-5-2.肝胆道系疾患
肝臓から分泌される胆汁を運ぶ胆管や、胆汁をためておく胆のうが何らかの原因で病気になると、
「胆汁うっ滞」と呼ばれる胆汁の流れが悪くなる状態になります。
画像出典:https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53916?page=2
- 胆泥症(たんでいしょう)
- 胆石症
- 胆管肝炎
- 胆のう粘液のう腫
- 胆のう炎
などが肝胆道系疾患です。
胆泥症は、何らかの原因で胆汁が濃縮して変質し泥状になり、胆のうに溜まった状態です。
胆石症は、胆汁が石のように固まってしまった状態のこと。
胆管肝炎は胆汁を運ぶ胆管と肝臓に炎症が起こり、胆泥症や胆石症、胆のう粘液のう腫を引き起こします。
胆のう粘液のう腫とは、胆のうの中にゼリー状になった胆汁がたまり、胆汁が排出できなくなった状態のことです。
重症化すると胆のうが破裂したり、消化機能が低下したりします。
胆のう炎は細菌感染や胆石、胆のう粘液のう腫などが原因で、胆のうに炎症がおこる病気です。
4-5-3.門脈(もんみゃく)シャント
門脈シャントは先天性(生まれつき)の病気のことが多く、肝臓への血管(門脈)と大静脈の間に奇形の血管が出来てしまう病気です。
画像出典:https://www.cc.miyazaki-u.ac.jp/vmthl/owner/a01.html
多くの場合は胎内で存在していた奇形の血管(シャント血管)が、産後も消失せずに残っていることが原因となり、門脈シャントを発症しています。
正常であれば胃腸からの血液は門脈からそのまま肝臓に運ばれますが、門脈シャントでは奇形の血管により解毒されない血液が大静脈に流れ出してしまいます。
そのため毒素が身体じゅうに回ってしまう状態に。
なりやすい犬種は
- ヨークシャーテリア
- ミニチュア・シュナウザー
- ダックスフンド
- トイプードル
などの小型犬に多く見られます。
4-5-4.急性肝炎
主に感染や中毒により起こり、肝臓に急激な炎症が起きる病気です。
感染では
- 犬伝染性肝炎
- レプトスピラ症
- 寄生虫
などにより引き起こされます。
【犬伝染性肝炎】
アデノウイルス1型というウイルスに感染することで、おもに肝臓の炎症(肝炎)が起こる病気です。
感染動物の糞尿、唾液を介して口や鼻から感染します。
【レプトスピラ症】
レプトスピラ菌という細菌により感染し、レプトスピラ症を発症すると、肝炎などを引き起こし、急激に肝臓の機能が低下することがあります。
汚染された河川や土壌などで感染することにより発症します。
アデノウイルス1型やレプトスピラ菌が原因の肝炎は、ワクチンの接種で予防が可能です。
また、肝臓に悪影響を及ぼす中毒を起こす物質として
- 洗剤
- 殺虫剤
- 植物
- 農薬
- 重金属
などがあげられます。
感染や中毒になり急性肝炎を引き起こすことで、肝臓の数値が急激に上がります。
4-5-5.銅蓄積性肝炎
銅蓄積性肝炎は、肝臓における銅の排泄機能が悪くなり、銅が蓄積しやすくなる病気です。
遺伝的に発症する、犬の肝臓病のひとつです。
銅は犬の体にとって必要なものですが、肝臓で過剰に銅が蓄積されてしまうと、肝臓の細胞を傷つけてしまい、肝臓に炎症を引き起こしてしまいます。
銅蓄積性肝炎は、発症しやすい犬種がある程度決まっています。
- ベドリントン・テリア
- ウエストハイランド・ホワイト・テリア
- スカイ・テリア
- ドーベルマン
- ダルメシアン
などがあげられます。
4-5-6.慢性肝炎
慢性肝炎は、急性的に起こった肝炎が長期間に渡り慢性化していったものがほとんどです。
過去にウィルスや細菌が原因で急性肝炎を起こしたことや、長年に渡り銅が体の中に蓄積していったことが原因で慢性肝炎になることもあります。
慢性肝炎はどの犬種でも発症する可能性はありますが、
- ドーベルマン
- ベトリントン・テリア
- コッカー・スパニエル
- ラブラドール・レトリバー
などの大型犬に多くみられます。
これらの犬種は遺伝的に銅蓄積性肝炎を発症しやすく、銅蓄積性肝炎はやがて慢性肝炎を引き起こすため、慢性肝炎になりやすい犬種と言えます。
慢性肝炎を放置しておくと肝不全や肝硬変を引き起こため、放置せずに適切に対応していかなければなりません。
4-5-7.肝硬変
慢性肝炎がさらに進行すると、肝硬変になります。
慢性的に肝臓に障害が生じていると、肝臓の機能が大幅に低下してしまいます。
やがて肝臓の機能が停止する肝不全が起きて肝臓が壊死してしまうと、肝臓の細胞が硬くなってしまうんです。
肝臓は壊れても再生することができますが、破壊と再生を繰り返していくうちに、徐々に肝臓が線維化して硬くなり、通常の機能が果たせなくなるほか、細胞自体が破壊されてしまいます。
それが、いわゆる肝硬変という状態です。
画像出典:https://www.miraio.com/blog/asymptomatic-carrier-of-hepatitis-b
また、お腹に水が溜まったり、肝性脳症を引き起こすこともあります。
肝性脳症とは肝臓の機能低下により、有害物質が脳にまで達して引き起こされる症状です。
肝臓には、アンモニアのような毒素を解毒する機能がありますが、肝臓病が進行して肝不全や肝硬変になると、毒素を解毒できなくなります。
その結果、解毒できなかった毒素が脳に達してしまうと肝性脳症を引き起こし、重篤な場合ではけいれんや意識障害などの神経症状が現れます。
4-5-8.肝臓腫瘍
肝臓にできる腫瘍で、いわゆる「肝臓ガン」です。
- 肝細胞がん
- 肉腫
- リンパ腫
- 転移性腫瘍
などがあげられます。
肝臓そのものにできる「原発性肝臓ガン」と、他の臓器から肝臓にがんが転移する「転移性肝臓ガン」の2種類があります。
犬の肝臓腫瘍の中で一番多いのが肝細胞癌で、約70%を占めます。
5.犬の肝臓の数値が高いときの対策
5-1.病院での治療について
犬の肝臓の数値が高くなっている原因を探り、悪ければその原因に対処した治療を行います。
症状に応じた投薬治療を行ったり、食欲がない場合は点滴治療を行ったりします。
病気であれば肝臓病の原因は様々なので、まず肝臓病になっている原因を確定することが先決です。
外科的手術を行わない一般的な肝臓病の治療としては、症状に合った方法で対処していくことになります。
門脈シャントや腫瘍などが原因だと外科手術が必要なこともありますし、中毒なら解毒剤などで原因を取り除かなければいけません。
ただ、肝臓は再生能力が高い臓器なので、初期の肝臓病(肝炎)の場合は、肝臓に負担をかけないように安静にして様子を見ることがほとんどです。
慢性的に肝臓病を患っているときは、食事管理が非常に大切になってきます。
5-2.肝臓の数値が高いときの食事
肝臓の悪いワンちゃんの食事は、たんぱく質が抑えられたものが望ましいです。
たんぱく質は、身体の機能を維持するために必要な栄養素なので摂取しなければいけませんが、肝臓が弱っているときに摂取し過ぎると、たんぱく質を分解するときに発生するアンモニアの解毒ができなくなってしまいます。
そのため、アンモニアを抑えられるようタンパク質の含有量を少なく調整したフードを選ぶのがよいでしょう。
例えば、私の開発した「肝臓病の療法食フード」があるんですが、良質なたんぱく質を使いつつ、たんぱく質の量もしっかり調整して作っているため、まずはお試しで使ってみるのもよいかと思います。
また食事については、消化のためにも一回でたくさん食べずに、少量ずつ回数を増やして分けて与えるようにしてください。
さらに、おやつにも注意が必要です。
せっかく食事でたんぱく質や糖質、脂質をコントロールしても、おやつを食べすぎてしまえば結局肝臓に負担がかかってしまいます。
食べすぎやおやつのあげすぎは肥満につながります。
特に老犬になると、散歩などの運動量が若い頃に比べて減少するので注意が必要。
肥満が原因で引き起こされる病気も多いため、食事量はコントロールしてあげることが大切です。
5-3.自宅でできるケア
愛犬の肝臓の数値が高い場合は、自宅でのケアも必要になります。
自宅でできるケアとしては
- 歯周病予防をする
- 毎日適度な運動をする
- ストレスを改善する
などがあります。
まず歯周病予防のため、歯みがきやデンタルケアをしましょう。
歯周病が悪化すると、口内で増殖した歯周病菌が血液に乗って全身に運ばれ、肝臓や腎臓、心臓などに重大な影響を与えてしまいます。
口内環境を清潔に保つことは、肝臓の健康を守ることにも繋がるため、毎日しっかり歯磨きをする習慣をつけてあげてください。
つぎに、毎日適度な運動をしましょう。
適度な運動をすることで、肝臓の脂肪を減少させる効果があります。
特に肥満などのワンちゃんは運動が必要でしょう。
あくまでも散歩などの軽い運動を、毎日続けましょう。
また、血流の維持も肝臓のケアには欠かせないため、運動が出来ない状態でしたら、体全体のマッサージや、お腹が冷えないように腹巻をしてあげるなどしてください。
最後にワンちゃんのストレスを改善しましょう。
ストレスは犬の肝細胞を傷つける「活性酸素」という物質を大量に作り出します。
「活性酸素」は肝臓や他の臓器を細胞レベルで攻撃し、老化の原因にもなります。
スキンシップもかねて遊んであげるなど、ワンちゃんのストレスを減らすことが必要です。
最後に
ぜひ、今回の記事が、肝臓の数値が高いワンちゃんをお持ちで、苦しい思いをされている飼い主の皆様のお役に立つことができれば幸いです。
では、またお会いしましょう!
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